「静内マガン越冬13シーズン目記録」
  
    【越冬期間/平成20年(2008)1月18日〜平成20年 3月 2日】 


  3.8   むかわ町に集結し始めたマガンたち


  2.24   数年ぶりに静内神森地区に姿を現したマガン145羽。懐かしい光景だ


 2.21   再び新ひだか町静内に姿を現したマガン45羽。 今シーズンの越冬は終わっていなかった


  2.9   何処へと飛び立ったのか、このまま群れは視界から消え、今シーズン新ひだか町静内での越冬が終了?


 2.9   むかわ町田浦で越冬を続けるマガン16羽・ヒシクイ1羽の計17羽


 2.9   今日、新ひだか町静内では午前中しか確認できず。また、これが新ひだか町静内でマガン見納めとなる?


 1.27    昨日よりは、群れに落ち着きが出てきており、朝から夕方まで一日中採食を続けていた


 1.26  警戒心も取れたと判断、今シーズン初めて時間をかけてマガンを撮影


 1.26  サラブレッドと仲良く採食


 昨シーズンの越冬開始日は、199512月、新ひだか町静内(当時・静内町)での越冬以来、最も遅い116日で
あったが、今季は更に2日遅い118日となった。これで、静内地区での越冬開始は11月〜12月が恒例となってい
たが、2年連続して翌年1月中旬(16日以降)となった。


 
 この間、ウトナイ湖、1223日、1230日、16日、114日。伊達市、15日。長都沼(千歳市)、16日、
1
14日。むかわ町、118日、120日、とねぐら入りを含めて調査し、12月下旬から1月中旬までの自動車での
走行距離は1,700kmを超えたが、マガンはむかわ町で16羽、ヒシクイ1羽の計17羽。長都沼でヒシクイ2羽を確認し
た以外は、確認することができなかった。

 しかし、マガンは、ウトナイ湖で1216日に約230羽、15日は約100羽、16日は約125羽、17日には個体
数不明をそれぞれウトナイ湖サンクチュアリが確認。静内地区では1225日数十羽?(個体数はこれより多いと思
われる)。
112日個体数不明と、それぞれ不定期にマガンが飛来した。

 
また、むかわ町でも118日と20日。29日に新ひだか町静内とは別群れで越冬するマガン16羽、ヒシクイ1羽の
17羽を確認、結局、この群れは20022003年に続き同町で二度目の越冬となった。しかし、これは別に125日、
夜明け前の午前6時頃、ウトナイ湖とむかわ町の中間辺りでマガン約120羽が日高自動車道上空を横断するのが確
認されているが、この群れが新ひだか町静内での越冬組なのか、それ以外の越冬していた群れなのかは、目撃情報
或いは他の確認例がないため不明である。

 では、新ひだか町静内以外でマガンは、なぜこのような行動となったのか。そして、どこで越冬していたのだろうか。
候補地を一つひとつ検証してみたい。

 先ずウトナイ湖であるが、今シーズンの積雪は少なく気温も11月から12月は例年になく温暖であったが、採食条
は良好であった。ねぐらについても1月に入ると5日から寒気団の到来と共に気温が下がり始め、23日までの約20
間は、最高で−17度、−10度以下となる日も続いたが、例年利用するウトナイ湖美々川河口域は115日にほぼ結
氷したが、それ以前は越冬環境が十分整っていた。

 次に、渡りの中継地として利用する長都沼は、主たる越冬場所となるネシコシ地区では12月下旬までは結氷してい
なかったがその後は徐々に結氷を始め、調査した16日現在、一部は結氷していなかったものの、114日には完
全結氷。更に例年よりは少ないとはいえ約25p程度の積雪があり、ねぐら、採食環境とも不良で越冬できる環境では
なかった。しかし、ここも例年よりは降雪量も少なく、気温も高いため結氷時期は遅れた。

むかわ町については、20022003年度に10羽の越冬実績がある。元来、降雪が少ない地域ではあるが今シーズ
ン特に積雪が少なく、静内地区で越冬開始した118日現在でも地表が現れ積雪ゼロという状態。ねぐらとなる鵡川
は、中流域では結氷していたが118日の調査では、越冬中のマガン16羽が夕暮時のねぐら入りでは鵡川河口域方
向へと飛び立ったことから、ねぐらとしてここを使用したと思われる。


 更にウトナイ湖、新ひだか町静内で断続的に100羽程度の群れが確認されているが、これは群れがウトナイ湖、新
ひだか町静内をそれぞれ越冬場所として適正かどうかを探るためと考えられ、いずれも越冬実績がある新ひだか町
静内とウトナイ湖との二箇所を比較したと考えられ、大変、興味深い。
 その裏付として、114日午前930分頃、むかわ町で、いつもはウトナイ湖方向より飛来するマガン群れが、海岸
線から新ひだか町静内方向より群れ多数が飛来して来たのを、むかわ町の建設会社社長が目撃しており、先の例の
とおり、今季は温暖化現象により越冬条件を満たす場所が増え、その場所を新ひだか町静内、ウトナイ湖、むかわ町、
そして不明であるがもう一箇所のどれにするか決めかね、その間、群れが何度かにわたり往来していたと推測できる。

 
なお、過去に越冬シーズン後半ではあるが、一日の内に新ひだか町静内、むかわ町間を往来するのが何度も確認
されている。

 結論として、静内地区での越冬開始が遅れた原因は、地球温暖化に伴う越冬環境の北上説が考えられ、今季、厚
真町、むかわ町、日高町富川にかけての地域は12月から123日までの約2ヵ月の間、殆ど積雪がなく採食環境とし
ては最良であったため、この地域を採食地とした。

 
ねぐらについても鵡川河口域など、使用できる場所の確保により、新ひだか町静内へ南下しなくても越冬条件を満た
すことが可能となることにより、移動時期が遅れたと考えられる。

 
 
二点目の117日までの越冬地については、確認されてはいないが次の理由からむかわ町と推定される。
 
@積雪がなく採食地としては絶好の環境下にあり、鵡川河口をねぐらとして利用でき越冬条件の採食及びねぐらが
  確保できた。

 
A114日、むかわ町の建設会社社長が約100羽程度の群れを新ひだか町静内方向からむかわ町へと飛来して
  来たのを目  撃している。

 
B平成201月、新ひだか町静内、ウトナイ湖に移動し5回の確認例があるが、どちらに行くにしても中間点に位置
  し、双方への渡来確率が高い。

 
C土地の執着が強いマガンは一度、訪れた場所を好む習性があるが、むかわ町で過去に越冬したことがある。
  (その群れが今シーズン越冬中の群れとは断定できないが)



越冬数
 ○147羽(マガン146羽・ヒシクイ1羽)


越冬期間
  ○平成20年1月18日〜平成20年3月2日(45日間)

ねぐら
 ○新ひだか町静内 静内川中流域(平成20年1月18日〜1月31日、2月16日2月20日)
 
○新ひだか町静内以外(新冠町方向へ向かうのを確認するが場所不明、平成20年2月1日〜2月15日、
  2月21日〜3月2日)

        

採食地
 ○平成20年1月18日〜2月2日→Y地区
 ○平成20年2月 3日〜2月9日→Y地区、TU地区併用
 ○平成20年2月21日〜2月24日→Y地区、神森地区併用
 ○平成20年2月25日→T地区(昨シーズン同様、シーズン後半に一度だけT地区で確認)

判明できない事項
 ○平成20年1月25日〜夜明け前の午前6時頃、ウトナイ湖とむかわ町との中間地点付近で、山側より海側へ
  の方向でマガン3群、約120羽が日高自動車道を横断し飛翔するのを確認。この群れがどこから飛来し、どこ
  で生息しているのかが不明。前日、静内川へのねぐら入りを確認済み。

 
○平成20年1月27日〜午後926分、新ひだか町静内末広町(市街地)にあるポスフール上空を100羽以上
  のマガン群れが低空で飛翔するのを確認。どうして夜間に群れで飛翔したのかが不明。

 ○平成20年2月10日〜2月21日、2月25日〜3月2日までの間、越冬地(採食地・ねぐら)が不明。新ひだか
  町静内以外の新冠町から日高町厚賀地区までの地区と推測されるが分からない。




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