越冬5シーズン観察データ〜2      


 (3月に入ると群れは盛んに飛翔を繰り返すようになった。一番上はシジュウカラガン)


 
  
今シーズンも越冬期間の平成11年12月21日〜平成12年
 3月22日の間、静内雁を保護する会員の協力を得ながら、毎日観察を続けデ
 ータを執りました。
   今年は、これまでの過ちを繰り返さないよう、゛他の者も近づけないが、自ら
 も群れに近づかない゛をテーマとし、何日かの特別な日は別として、とにかく人
 の姿を見せないよう、群れに人為的なストレスや余計な神経を使わせないよう、
 越冬環境の形成に配慮しました。
   結果、群数68羽が一羽も欠けることなく、3月下旬まで全羽が無事に越冬を
 完了しました。
   観察日誌の中から、特徴的なものを幾つかご紹介します。


●平成12年1月2日(日)6時39分〜16時33分(快晴)
 ○場所〜A地点
 ○確認〜68羽 (マガン63羽、シジュウカラガン4羽、ハクガン1羽)
 ○考察〜今日の観察から感じた今シーズンの群れの特徴は次のとおり。
       @群全体の行動に落ち着きがあり安定感がある。特に人間に対する警戒心は一昨
         年(越冬3シーズン目)、昨年(越冬4シーズン目)と比較すると比較にならないく
         らい安定感に満ち、実にリラックスして採食活動に専念している。
         理由は幾つか考えられるが、何と言ってもカメラマン、バードウォッチャー等、本来
         の越冬には関係のない(余計な)人の出入りがないこと。
         群れ全体数が増え、集団防衛体制が確立された事。今シーズンはまだ危険なシ
         ーンと遭遇していない事などがあげられる。
       A群れ全体(家族間)で常に互いに鳴き交わし、コンタクトをとっている。特にねぐらへ
         の移動が近付く午後4時過ぎになると顕著になる。
       B一匹のボスが中央に位置取り、常に周囲を見回し警戒している。
       C個体数が多い事もあるが、群れが二つに分かれての採食行動をする。このような
         ことは過去になく、従来はいつも一団となり採食していた。
       D採食地がA牧場のA地区に限定される。
       E昨年と比較し、ねぐらへの飛び出し方向が、市街地ではなく田原方向に一定して
         いる。
 ○観察〜今日は、天候がよいため、予定を変更してハクガン。シジュウカラガンの特徴見極め
       のため、至近距離での観察を試しみたが、昨年の群れとは違い人間に対し警戒心
       が余り無く、この10日間、マガンたちが警戒心を起こさないために自分が近寄らな
       いように配慮したことの成果とも思われ、何よりも嬉しい。
       6:39〜静内川方向より群れが飛来、A地点に降りる。
       9:00〜A地点の牧草地で横一列になり、採食するマガンたちの群れを確認する。
         20〜カラスが近付き、群れが一斉に警戒する。
         25〜作業のため牧場社長が運転するトラクターがA地点横の道路を通過するも、
            少々、舞い上がった後、A地点へと降りる。
      10:13〜シジュウカラガンの採食場所は、いつも群れの端になる。
      11:05〜群れをカウントするが今日は全体数68羽と昨日より4羽多い。
      13:15〜群れには1羽、ボスがおり何時も群れ全体を見張っている。危険が近付くと
            短い警戒音を発し知らせる。
      13:30〜滅多にないチャンスなので、個体詳細識別のために撮影開始。
      14:10〜サラブレッドを厩舎に連れて行くため、牧夫A地区へと入るが群れは警戒は
            せず。
        17〜ハクガンとシジュウカラガンとの行動や採食場所は別々。
        30〜常に群れが移動するため、数をカウントするのも時間がかかるがやはり68羽。
      15:09〜採食の群れが二つに分かれる(それぞれの群れ数はほぼ同数)。これは、
            たまたまそうなったのか、何かの意味があるのかは分らない。
        19〜ねぐら入前の採食のため、一斉に採食が活発となる。
        25〜シジュウカラガンの採食群れが3羽+1羽から4羽となる。
        55〜ボスが盛んに短いリズムの警戒音を発し、群れ全体が一斉に首を上げる。
           良く見るとキタキツネが周辺をうろついているが、最後はキタキツネの方で襲
           撃を諦め群れから離れる。
      16:05〜気温が急激に下がり、観察もハード。特に足の冷たさは我慢の限界。
      16:38〜バラバラだった群れが首を上げ、一斉に鳴き交わし一つに集結するとねぐら
            へと向けて飛び立つ。今日は、一旦、南方向へと飛び出しぐるっと回って東
            へと向きを変える。昨日よりは5分程度、飛出時間が遅くなる。


●1月8日(土)6時42分〜16時38分(曇り)
 ○場所〜A・B地点
 ○確認〜68羽(A63羽、B4羽、C1羽)
 ○考察〜この日時点でのハクガンの特徴
       *種別は、羽色から判断し2〜3年目の亜成鳥とも思われたが、後日(12日)、
         呉地会長に照会し幼鳥であることが判明する。
       *体の特徴
        ・体の大きさはマガンより多少大きな程度。
        ・嘴は、黒みがかかったピンク。(どす黒い)
        ・足は、嘴よりまだ黒いピンク。
       *羽色
        ・額、頭頂、後頭、後頸、背、腰など羽の上面は灰色。尾羽は真白。
        ・初列風切は真黒、次列風切は灰色、三列風切より上部は白。雨覆が灰色が
         主であるが、白色と灰色との混成で白色が斑点状に見える。
        ・飛ぶと初列風切の黒が良く目立つ。
        ・首もと(首と腹の境界)は白い環状
       *行動
        ・時折、首を突き上げ上空を見上げる。また、周囲の様子も見回す回数もマガン
         よりは数倍多い。
        ・周囲のマガンにいじめられる事もなく、また、いじめたりもしない。仲良く行動を
         共にするといった印象。
       *採食
        ・採食は基本的には単独行動であるが、シジュウカラガン4羽と共に行動するこ
         とも多い。
        ・採食のポジショニングは、群れの歩きながらの移動では常に先頭をきることが
         多く、いつも群れの端か先端に位置する。
        ・採食行動はマガンと比較し豪快に草を食するといった感が強い。具体的には牧
         草を食べるというより、嘴で豪快に食いぢぎるといった印象で、食欲は旺盛。
 ○観察〜今日はN新聞社写真部記者が地球温暖化特集取材のため来町。一日、取材の協
       力。色々と問答もあったが、当方より5項目の取材条件を全て遵守するという約束
       で、取材許可。
       後日、掲載された記事をチエックするが約束事は見事に履行。記者の資質もさるこ
        とながら、さすがに全国紙の品位。スタンス、物腰、対応等、道内の某TV放送局
        とは基本的に大きく違う。
        悔しいけれど、北海道はいつになったら文化や環境に対し、先進国(県)となり得る
        のか。おおらかも良いが、物事の認識、見極めがいつも甘いと私は思う。
       9:40〜現状では一番、雪解けが早い、A地区の道路側で採食。現在では採食地
            としてはここが一番のベストポジション。馬が群れ付かづき一旦、上空へと
            舞い上がるが直ぐに降りる。
      10:10〜馬糞捨てのためトラックが道路を走り、10m程度歩いて採食場所を移動。
            牧夫のFさんと色々と野鳥談義。
         35〜群れが半分ずつの二手に分かれて採食を開始。
      11:30〜気温5度。群れが再び、一団となる。
      12:00〜A地区の中央部へ移動し採食。
      13:20〜気温が寒いせいか、いつもより早めに馬の厩舎入れが始まり、B地点へ群
            れが移動。
        :22〜Aへと舞い戻る。この間2分。
      14:20〜羽繕いをするが、今までになく群れが当方に接近。記者、明日取材で釧路
            へ移動のため、バス停まで送る。
      15:34〜日が陰り気温が下がる。温度計を見ると−2度。群れが休息。
      16:00〜小雪がちらつく。
        05〜キタキツネが接近、一斉に警戒のホーズ。リーダーが盛んに群れに警戒の
           声で鳴く。
        19〜盛んに採食を続ける。
        38〜ねぐら入りのため、静内川方向へと飛び立ち観察終了。


●2月20日(日)6時10分〜17時40分(晴れ)
 ○場所〜E・A地点
 ○確認〜68羽(A63羽、B4羽、C1羽)
 ○考察〜*午前中、オオワシ・オジロワシの一斉調査。
        ・静内川河口〜オオワシ3(J3)
                 オジロワシ3(A2、J1)
        ・豊畑川河口〜オオワシ4(A2、J2)
        ・合   計〜13羽
       *今日現在、雁の特徴。
    【ハクガン】
        ・嘴が若干、赤くなった。下嘴はまだ、黒い部分が残っているが、上部嘴部分が
         かなり赤みが目立ってきた。
        ・嘴先端は丸みがあり、ピンク色。
        ・羽色の特徴〜グレーの部分は、後頭部から首の後ろ側、そして羽上部の1/
         3箇所。
        ・首筋の白黒ストライプ部分が明白になってきた。
        ・顔、首などが特徴的であるが、他の雁と比較し体が大きくなった印象を受ける。
         特にシジュウカラガンと比べると歴然の感がある。
    【シジュウカラガン】
        ・4羽の行動は1か月前と同様に、基本的に4羽が一緒に行動し、時折、3羽の
         近くで1羽が別に採食するが、従来の行動と変化はない。
 ○観察〜6:10〜E地点に降り、休息。
       7:00〜E地点、右上に移動し採食。
      11:48〜A地点に移動し採食。Aでの融雪が進み、採食条件が良くなり、ここでの採
            食時間が多くなってきた。
      13:10〜久々にA牧場で観察。A地区でマガン群れが僅かに顔を出している牧草を      
            採食している光景を見て、思わず心が和む。群れはやはりこの牧場が良く
            似合う。
      14:00〜浦和の自衛隊で今日から高射砲の射撃訓練が始まり、ここの牧場まで射
            撃音が強烈に響く。その度に群れが一斉に顔を上げ、警戒する。
        :30〜群れの一羽が、盛んに高く鋭い声で鳴く。自分に対しての警戒の声であった
            いうことが後程判明(15時頃には我々が黙って観察をするのが分かり一切
            鳴かなくなった)。
       :54〜今日は暖かい日で、この時刻で気温9度。この時間に馬入れで牧夫がA地
            区に入り、群れが一斉に首を上げ警戒のポーズ。
      15:30〜気温6度。シジュウカラガン3羽+1羽で別行動で採食。
        :45〜ねぐら入りが近付き、盛んに採食を開始。
        :20〜一段と採食活動が盛んになる。
        :40〜気温2度。
      17:00〜気温−2度に下がる。
        :10〜一塊となり採食する。
        :22〜ねぐら入りのため、静内川方向へと群れが飛び立つ。
        :40〜ねぐらで群れを確認。