「マガン北海道越冬8シーズン目記録」

 【越冬期間/平成14年(2002)12月17日〜平成15年(2003)年 2月24日】 

 
  降雪も少なく、比較的採食条件に恵まれたシーズンとなった

 
  より採食環境の良い場所へと移動する群れ

 
  
 12月19日午後4時夕闇迫る陽射しを受けて採食するマガン群れ
   

 
  
12月19日午後3時40分、気温が急激に下がりいきなり粉雪が舞ってきた

 
  
12月20日午後2時、気温が急何かの物音で直ぐに反応する群れ。相変わらずの用心深さは今年も変わらない
  

 
 
 2003年1月2日、マガンと一緒に採食するオオハクチョウ
   
 
  
2003年1月3日、新春の青空を隊列を整えて着陸体勢に入る



*はじめに
 越冬8年目となる今シーズンは、12月は温暖だったものの1〜2月は気温が下がり、越冬6シーズン
 目、2月10日以降になってもマイナス10度以上の気温を連続して記録する程の記録的な寒さではなか
 ったものの、総じて寒い冬となった。

  しかし、10月〜12月は比較的温暖であったため、秋になっても餌となる牧草が青々しており、例年に
 なく採食環境が整った結果、1月初旬までマガンが丸々と太っており、糞の大きさも通常のものより数
 割程度太く長く、降雪量もそこそこで収まったため、採食条件に恵まれたシーズンとなった。

  この寒気の中、越冬したガン類は越冬個体数113羽で、昨シーズン126羽と同様、連続して100羽を
 超えたが、ハクガン、シジュウカラガンなどの希少種は一羽も含まれず全羽がマガンであったが、百羽
 を超えると個体数の確認作業は困難を極め、マガンが低い姿勢で採食する。数羽が重なる。絶えず移
 動しながらの採食となる。などの事象と合わせ、大抵の地表には凹凸があるため窪地で採食するマガ
 ンが見えづらくなるなどの悪条件が重なるため、双眼鏡やプロミナーでは殆ど不可能という事態となっ
 た。
  最も確実な確認方法は、写真撮影による確認方法で、それも全羽が揃った空中に限定されるが、こ
 れも個体が重なる等の難題があり、5〜6枚撮影しても全てが違う数となるなど、困難を極めた。

  越冬当初、何団かに分かれて静内町へと渡来したり越冬シーズン中、鵡川町との間を往来するなど、
 従来の越冬パターンと同じ行動をとったものの、2月24日、一度、静内町から鵡川町へと移動したもの
 の3月5日〜6日の二日間、再び静内町へと舞い戻り採食活動を続けるなど、従来とは相違した新しい
 行動パターンも見せ、全てが例年同様の越冬パターンが一度もないのは観察を続ける者としては大変
 興味深く楽しみの一つである。

 今シーズンの特徴的なことをまとめると
 @採食場所がC地区からA地区を往来し、前半はC地区、後半はA地区となった。
 A2月24日、静内町から姿を見せなくなったものの3月2日〜3月6日の5日間、再び静内町へと舞い
   戻り採食活動を続けるなど、従来とは違った新しい行動パターンを見せた。
 B昨シーズンに続き、越冬数が連続して100羽を超えた。
 C初めて越冬した1995年から8シーズン目を数え、静内町でのマガン越冬が完全に定着した。
   群れ全体の動向については、本群(本隊)が昨年より19日遅い12月17日(昨シーズン11月29日)に
 静内町内へと姿を現し、いつもと同じにほぼ同一の行動をとったが、越冬当初、ねぐら入りする際に二
 班に分かれて行動したことに象徴されるように大別し二つの群れに分かれているように見受けられた
 が、シーズンを通しての明確なものではなかった。

  また、昨シーズン鵡川町で10羽が初めて越冬し、今シーズンも同様の行動をとるのかと思われたが、
 予想に反し、鵡川町での越冬は一羽も確認出来なかった。しかし、鵡川町と同じ胆振支庁管内の伊達
 市で1998年(平成9年)秋より、数羽から数十羽と越冬個体数は少ないものの今年も5シーズン連続し
 て越冬していることが判明し、その数も年々、増加しているおり、今シーズンは12月22日現在、58羽が
 確認されている。北海道内で静内町以外にも越冬している場所があることが分かったことは、地球温
 暖化現象に起因したマガンの越冬事例が更に一つ増えたこととなるので、大変嬉しい事象である。

*確認数・期間

 ●マガン113羽〜平成14年12月17日〜平成15年2月24日(70日間)
   ○マガン92羽〜平成14年12月17日〜平成14年12月18日(2日間)
   ○マガン95羽〜平成14年12月19日〜平成14年12月19日(1日間)
   ○マガン102羽〜平成14年12月20日〜平成14年12月20日(1日間)
   ○マガン115羽〜平成14年12月21日〜平成15年2月24日?(66日間)
   ○マガン95羽〜平成15年3月5日〜平成15年3月6日(2日間)
   ※個体数の確認作業は、マガンが100羽以上を超えるとプロミナーによるカウント確認では地上
     条件等があり、正確な数字をカウントすることは不可能に近いため、上記数字で多少の誤差は
     有り得る。

  ●成鳥比率
    2月15日現在の観察で成鳥として確認できた個体数が66羽であったため、未確認の個体も多か
    ったことから、最低で成鳥が66羽は越冬したことになる。比率は全体数が113羽として58.4%で、

   成鳥の構成比率は約6割以上となる。


*ねぐら


   今シーズンも全てが静内川の中州を使用したが、予想に反して一箇所ではなく、数箇所をその時の
  閑環境条件等により使い分けていた。なお、場所は越冬開始の1シーズン目から基本的に変化はな
  く、静内川である。
  ○場所〜静内川中州(田原)

*採食行動
  
   
越冬8年目となる今シーズンの特徴的は、ここ数シーズン見られる特徴であるが、採食場所が静内
  町のみならず鵡川町まで移動するなど一定しなかったことで、一昨シーズンまで2年連続採食場所で
  あった牧場には12月の当初に数回、上空等に姿をみせたが、想像ではあるが、牧場側で推測するに
  追い払う等の行為がなされた結果、居着くことが出来なかった結果、昨シーズン後半の採食地である
  場所を主な採食場所とした。

    しかし、シーズン前半から主な採食場所として利用したA・B地区は、所有者である牧場主がマガ
  ンを爆竹で押し払う等の行為を繰り返した為、A・B地区から他の場所へと移動せざるを得ず、結局、
  C・D・E・F・G地区へと採食場所を移動してしまった。
    また、2月9日以降、越冬1〜3シズンによく使用したC地区の休耕田で採食することが多く、後半
  はA地区での採食は殆ど確認されなかった。
   寒かった昨シーズンとは違って今シーズンは、秋10〜11月が好天に恵まれ温暖で、更に12〜1月
  までの前半は暖冬となり、更に今シーズンはそこそこの降雪があったため、牧草を雪が覆うので機能
  する温室効果とも重なり、主食である採草地や放牧地の牧草がこれまでになく発育し、1月初旬まで
  緑色の栄養豊富で美味しい牧草の新芽を食することが可能となるなど、採食条件がこれまでの越冬
  シーズン中最も環境が整ったため、1月までマガンたちが丸々と太った姿をみることが出来た。
   また、例年、神森地区などでかなりの数のオオハクチョウが牧草地で採食する光景が見られるが、
  牧草の発育がよいため今シーズンも各地で繁盛に確認できた。

*群行動特徴

 <1月2日>
  ○ねぐら入りの群れ行動から判断すると二つの大きな群れから構成されていることが分かる。
  ○越冬行動を観察すると、昨年同様、群れ数が多いために群れ全体に落ち着きがある。
  ○採食する場合、いつもリーダーが端に位置し見張り役を担っている。
 <2月15日>
  ○群れ中、成鳥の個体数は最低で66羽以上をカウント。群れが100羽として約七割は成鳥。
  ○この時期特有の一箇所に落ち着かなく採食をする。しかし、高度はまだ、低くまだ、暫くは静内町で
    の採食活動を続けると思われる。
  ○群れの飛行隊列が団子状から横一列に編成されての飛行となる。
  ○例年と比較し、マガン群れが丸々と太っており、この時期も採食条件が良いということを裏づけして
    いる。
  ○いつも、群れ左端にリーダーが位置し。辺りを警戒しており、今日もその行動が見られた。 
  ○キタキツネが採食近くを横断するが、マガン、キタキツネの双方がお互いに興味を示さず。
  ○採食中も、頻繁に相手の尻を突くなど、いざこざが絶えず、個々のテンションも高い。
  ○今日の採食を観察していると、草を食するというより、強引に引きちぎるという感じでの採食活動に
    変わっている。また、食するスピード感も増している。
 <2月23日>
  ○目測ではあるが群数が約90羽となる。
  ○地上を一列になり、もたもたと歩きながら採食場所を移動する。
  ○採食中、必ずどこかで小競り合いがある。嘴で尻尾や腹を突っつく。オオヒシクイ同様に互いに首を
   前にせり出し、 威嚇するなどの行動が目立つ。
  ○数分に一度は数羽が数メートル程度に飛翔しすぐに着地する。
  ○ねぐらからの飛び立ちは、二つに分かれて飛翔するが、結局は早い時間に採食地で合流する。
  ○採食行動はいつもより活発化となる。
  ○今日は、採食中も盛んに群れ通しで鳴き交わしが見られた。
  ○群れ全体に移動が近づいている性か、個々のテンションが高くなっいる。
  ○F地区は、開けたロケーションではあるが、採食物を調べてみると牧草ではなく、雑草で種別的には
   
もっと他に良い牧草地が沢山ある。採食地を選択するにあたって採食物の質ではなく、人間、動物等
   や様々な障害物がない安全性に優れたロケーションの良い場所を採食場所として選択していると思わ
   れる。
  ○F地区の採食物を調査していた際に発見したが、ここには蝦夷シカの足跡、糞が沢山あり、マガン以
   外の動物もここを採食場所として利用していることが判明。シカの糞等は今朝のものと思われる新し
   いものが多い。
*群の行動調
  
  ○12月17日〜今シーズン初めてねぐら入りするマガン群れを確認。昨シーズンより19日遅い。
  ○12月18日〜群れ数が92羽を数える。
  ○12月21日〜群れ数が113羽を数える。
  ○1 月31日〜この日まで、主な採食場所は、A・B・C・D地区
  ○ 2月 1日〜この日から採食地がE地区へ移動する。
  ○ 2月 9日〜この日以降、主な採食地が地区A・B・CからF地区へと移動する。
  ○ 2月10日〜群れ行方が不明。
   2月11日〜鵡川町で群れが確認される。
  ○ 2月12日〜この日も鵡川町で群れが確認される。
    2月13日〜静内町での採食活動が再開される。
  ○ 2月24日〜この日まで静内町での越冬が確認される。
  ○ 2月25日〜マガン群れを静内町内で確認できず。
  ○ 3月 2日〜御園地区、豊畑地区でマガン群れを確認。
  ○ 3月 5日〜C地区でマガン群れを確認。
  ○ 3月 6日〜この日までC地区でマガン群れを確認。
  ○ 3月 7日〜この日以降、静内町でのマガン群れは確認できず。
  ○ 3月16日〜渡り途中のオオヒシクイ15羽を豊畑地区で確認。
   3月17日〜この日まで渡り途中のオオヒシクイ15羽を豊畑地区で確認。
*静内町以外の道内越冬地
  ウトナイ湖
 (データ協力:ウトナイ湖サンクチュアリ)
    
 ○12月 1日〜マガン等未確認
     
 ○12月 2日〜マガン+20
       ○12月 5日〜マガンを確認
       ○12月 6日〜マガン+−222羽
       ○12月 7日〜マガン160羽
       ○12月 9日〜マガン確認
       ○12月13日〜マガン確認119羽

    
 
○12月14日〜マガン確認126羽
        ○12月15日〜データなし
      
 ○12月16日〜マガン確認189羽
  
  
長 都 沼 (データ協力:諸橋仁美、佐藤ひろみ)
    
12月 1日 マガン74 
      
○12月12日 マガン74 羽
     ○12月15日 マガン74 羽

 
    ○12月16日 マガン74 羽 
     ○12月17日 マガン74 羽 
     ○12月19日 マガン 0羽
     
12月20日 マガン 0羽 
     12月21日 マガン 0羽 



過去の越冬期間等(主群〜群れ本隊)
 
  ○1シーズン目/平成7年12月22日〜平成8年3月24日(93日間)
    42羽(マガン41羽、ヒシクイ1羽)
  ○2シーズン目/平成8年12月29日〜平成9年2月23日(57日間)
    28羽(マガン28羽)
  ○3シーズン目/平成10年1月6日〜平成10年2月22日(48日間)
    34羽(マガン33羽、シジュウカラガン1羽)
  ○4シーズン目/平成10年12月28日〜平成11年2月25日(60日間)
    48羽(マガン47羽、ヒシクイ1羽)
  ○5シーズン目/平成11年12月21日〜平成12年3月22日(93日間)
    68羽(マガン63羽、シジュウカラガン4羽、ハクガン1羽)
  ○6シーズン目/平成12年12月13日〜平成13年2月22日(55日間)
    54羽(マガン52羽、ヒシクイ1羽、ハクガン1羽)
  ○7シーズン目/平成13年11月29日〜平成14年2月22日(87日間)
    126羽(マガン125羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
   ○8シーズン目/平成14年12月17日〜平成15年2月24日(70日間)
    113羽(マガン113羽)
   ※平均値/越冬群数〜64.12羽、越冬期間日〜70.37日