(COP3)地球温暖化防止京都会議



●と き
   1997年12月1日(月)〜10日(水) (交渉は11日まで続行)

●ところ
   京都府京都市 国立京都国際会館

参加者
   9,850人 (161ヶ国、政府関係者、NGO、プレス)

●会議の概要

  12月1日(月)



〜7日(日)

8日(月)
〜10日(水)
11日(木)
 ○COP3開会。事務レベルで議定書交渉を開始。
 ○大木環境庁長官をCOP3の議長として選出。
 ○議定書交渉のための全体委員会を設置し、エストラーダ
   AGBM議長を議長に選任。
 ○全体委員会及びその下に設置された非公式の交渉グルー
   プ等において議論。
 ○閣僚レベル会合開催。
 ○閣僚レベルも含めて交渉を継続。 
 ○COP3において京都議定書を採択。

議定交渉
  数値目標及び途上国問題の扱いが大きな論点となった。

◎数値目標 
  1. 数値とその枠組み
     会議の前半においては、主に対象ガスや吸収源の扱い、柔軟性措置等の枠組みの議論が行われたが、必ずしも明確な結論には至らなかった。その後、第2週に入り閣僚レベルで日・米・EUを中心にこうした数値目標の枠組みと数値について包括的な議論が行われ、合意に至った。
     この結果、対象ガスは6ガス、吸収源は90年以降の植林等の活動に限って勘案することとし、先進国全体で2008年〜12年に90年比で少なくとも5%削減、各国の目標については差異化により決定し、日本は6%削減、米国は7%削減、EUは8%削減とされた。
  2. 柔軟性メカニズム
     米国が導入を強く主張していた柔軟性メカニズムのうち、排出権取引については、途上国の反対にあったものの最終的には受け入れられた。また、先進国間の共同実施が合意を見たのに対し、途上国との共同実施は合意されなかったが、実質的にこれに類似した機能を有するクリーン・ディベロプメント・メカニズムが合意された。
  3. EUバブル
     EUバブルについては、削減目標について深堀りを求めるとともに、議定書上、責任関係の明確化、バブルの拡大時の扱い(EUが拡大した場合も拡大前の加盟国の目標に変更をもたらさないこと)について規定を設けることを条件にこれを認めた。
◎途上国問題
  いわゆる「エボリューション」に関し、ニュージーランドより、将来の途上国の目標設定につきCOP3以降に交渉プロセスを開始するとの京都決定の発出が提起され、先進各国が賛同したが、途上国に対し新たな義務を求めないとのベルリン・マンデートを理由に途上国が強く反対し、採用されなかった。また、途上国による自主的な目標設定に関する規定については、米国等が強くその導入を主張したものの、途上国の反対が強く、最終的に削除された。
 他方、既存の条約上の義務の推進についての規定が盛り込まれるとともに、クリーン・ディベロプメント・メカニズムが途上国の持続可能な発展を支援するものとして新たに規定された。
●評価
    今回採択された議定書については、先進各国の数値目標が決定されるとともに、途上国についてもクリー
   ン・ディベロプメント・メカニズムなどを通じて一定の参加を促すことが合意され、中長期的な観点からの地球
   温暖化防止に向けた重要な第一歩を踏み出すことができるもの。
     特に、各国の削減目標については、衡平性の観点からこれまでの各国の政策努力を勘案しつつ、差異
   化の導入、EUバブルの深堀りなどを行い、各国の実情を踏まえた実現可能性のある最大限の削減目標と
   なっているものとして評価。
●その他
    COP4は98年11月にアルゼンチンで開催することが決定された。



【京都議定書の概要】

●数量目的

 ◎目標年次
2008〜2012年
 基準年次
1990年(HFC、PFC、SF6は95年も選択可能)
 ◎レベル
温室効果ガスを先進国全体で基準年より少なくとも5%削減
(日本▲6%、米国▲7%、EU▲8%(90年比))
 対象ガス
6ガス(CO2、メタン、亜酸化窒素、HFC、PFC、SF6)
 吸収源
植林等の吸収源の増減を目標達成のために勘案することとした。
(ただし、対象は、COP3では1990年以降の植林等に限定することとし、その他の吸収源の扱いについては議定書の第1回締約会議(MOP1)以降検討、決定することとする。)
 ◎柔軟性
○先進国間排出権取引の導入
先進国間で数量目的を「排出権」として取引できる仕組み。導入は決定されたが、詳細は、COP4以後の締約国会議で決定することとされた。
○先進国間共同実施の導入
先進国で温室効果ガス削減のプロジェクトを行った場合、そのプロジェクトに伴う削減量を移転・取得できる仕組み。
○クリーン・ディベロップメント・メカニズムの導入
温室効果ガス削減プロジェクトについて、その削減量を、一定の認証手続きを経て先進国が取得できる仕組み。
 ◎バブル
EUバブルについては、削減目標について深堀りを求めるとともに、議定書上、責任関係の明確化、バブルの拡大時の扱い(EUが拡大した場合も拡大前の加盟国の目標に変更をもたらさないこと)を規定。

 (数量目的の各国毎の数字)

    +10% 
+8% 
+1% 
安定化 
▲5% 
▲6% 
▲7% 
▲8% 
アイスランド
豪州
ノルウェー
NZ、ロシア、ウクライナ
クロアチア
日本、カナダ、ハンガリー、ポーランド
米国
EU、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、
仏、独、ギリシャ、アイルランド、伊、リヒテンシュタイン、
ルクセンブルグ、モナコ、蘭、ポルトガル、スペイン、
スウェーデン、英、スイス、ブルガリア、チェコ、エストニア、
ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア 


●途上国問題

 ◎条約上の既存の義務の推進
 気候変動枠組条約に規定されている各国の情報の送付などの既存の義務を着実に推進する。
 ◎クリーン・ディベロップメント・メカニズムの導入
 温室効果ガス削減プロジェクトについて、その削減量を、一定の認証手続きを経て先進国が取得できる仕組み。また途上国による対策に対し資金援助を行う。
 ◎自主的な目標設定、エボリューション
 途上国による自主的な目標設定や、将来の目標設定につき交渉を開始する「エボリューション」については、途上国からの強い反対を受けて盛り込まれず。

●政策・措置

   政策・措置については、先進各国が以下のような政策・措置を国情に応じて講じることとされた。
◎エネルギー利用効率の向上
◎新エネルギー・再生可能エネルギー、先進的・革新的技術の研究、開発及び利用拡大
◎森林等のCO2吸収源の保護 他

●発効要件             

   本議定書は、@55ヶ国の批准、及びA批准した付属書I国(先進国)のCO2総排出量が全付属書I国のCO2
  排出量の55%を超過する  ことを要件として発効する。



【参考】


●気候変動枠組条約交渉について

 現行の気候変動枠組条約(1994年3月発効):2000年までのCO2 等の温室効果ガスの排出抑制についての国際的枠組み。
 2000年以降の対策については、具体的定めを置いていない。


●気候変動枠組条約の概要

(目的)
 大気中の温室効果ガスの濃度を気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準に安定化すること。
(先進国の約束)
 「2000年において温室効果ガスの排出量を1990年水準で安定化すること」の重要性を認識し、政策・措置を採用すること。
(途上国の約束)
 先進国のような約束はなく、排出状況等についての通報のみ。
 このため、第1回締約国会議(COP1)において、2000年以降の先進国の
  (1)温室効果ガス排出の抑制・削減の数量目的の設定
  (2)温暖化防止のための政策・措置の精緻化
 等について検討を開始し、第3回締約国会議(COP3)までに結論を得ることとされた(ベルリン・マンデート)。


●条約交渉のスケジュール

第1回締約国会議(COP1)  95年3月〜4月      ベルリン
第2回締約国会議(COP2)  96年7月         ジュネーブ
第3回締約国会議(COP3)  97年12月1日〜10日  京都



【資 料】


[地球温暖化防止京都会議]
  97年12月の地球温暖化防止京都会議(COP3)において,日本は,温暖化ガスの排出量を2010年ころまでに1996年比−6%に下げる約束をした。この目標を達成するためには,エネルギー利用に伴う CO2排気量をそのときまでに96年レベルに下げる必要があり,政府は,98年に国のエネルギー需給見通しの再評価を行った結果,2010年の原子力発電の総設備量を6600万〜7000万kWにすることを目標として掲げている。
  資源小国の日本にとってエネルギーの安定供給を図っていくことがとくに重要であり,原子力は,石油への過度の依存を抑制するうえから有効なエネルギーとされてきたが,今後は,さらに,CO2排出量の削減の要請に応えるための必要性が増している。


[地球温暖化防止条約] 
  地球温暖化とは,石油・石炭など化石燃料の大量使用などによって地球大気の〈温室効果〉が進み,地表面の温度が気候の自然変動に加えて上昇すること。温室効果の中心となる大気中の物質(温室効果ガス)は,二酸化炭素,メタン,フロン,亜酸化窒素などである。化石燃料を燃やすことで発生する二酸化炭素は,産業革命以来その放出が飛躍的に増大しており,大気中の二酸化炭素濃度は産業革命以前の280ppm程度から1994年で358ppm,このまま放出を続ければ21世紀中ごろには産業革命以前の2倍に達するとの推定がなされている(ICPP 第2次評価報告書)。他の温室効果ガスの濃度もさらに大きい割合で増加しているとみられ,現在のペースで増加した場合,100年後には現在より2度上昇すると予測されている。気温の上昇は,海水の膨張や氷河の融解による海面水位の上昇,生態系の変動や農業への影響による食糧安全保障への打撃など深刻な問題をもたらすことが懸念されている。
  地球温暖化とその危険性の指摘については異論も提出されたが,1980年代には,防止のための対策の必要性が国際的に認められるようになり,88年11月に初めての公式の政府間の検討の場として UNEP と世界気象機関(WMO)の共催による〈気候変動に関する政府間パネル(IPCC)〉が設置された。ここでは地球温暖化に関する科学的側面からの検討がなされ,90年8月に第1次報告書,92年2月に補足報告書がまとめられた。これらをうけて,91年2月より地球温暖化防止条約(気候変動枠組条約)の交渉会議が開始され,6回にわたる会議を経て,92年5月条約を採択,同年6月,国連環境開発会議の期間中に日本を含め155ヵ国が署名した(1994年3月に発効。97年5月現在,締約国167ヵ国)。
  この条約は二酸化炭素排出抑制のための条約で,同条約は二酸化炭素の国別発生量を,2000年時点およびそれ以降も,1990年のレベルに抑制するよう求めている。しかし,この目標設定には全世界の二酸化炭素排出量の22%を占めるアメリカが反対したため,各国は拘束力のない目標〈1990年の水準に戻すことをめざす〉という表現に改め,アメリカの加盟を確保した。1995年3月から4月にかけて〈気候変動枠組条約第1回締約国会議〉が170ヵ国代表の参加を得てベルリンで開かれ,(1)先進国が2000年以降,例えば5年ごとの一定期限を設けて削減目標値を定める,(2)1997年の第3回締約国会議に数量化された抑制・削減目標を含む議定書,または他の法定文書の採択をめざす,ことを内容とする〈ベルリンマンデート〉を採択した。96年7月,ジュネーブで行われた第2回締約国会議を経て,97年12月,第3回締約国会議は京都で開催された。この会議では定量的な削減目標を含む法定文書に向けて,削減の大きさや期限,その目標を各国一律の削減率とするか国ごとに異なるものとするか,が争点となった。結局,国ごとに異なる目標とし,温室効果ガスの排出量を2008年から2012年に先進国全体で1990年レベル比5.2%削減するとの議定書を採択。日本6%,米国7%,EU8%といった削減内容であるが,森林による吸収効果を計算する〈ネット方式〉の導入,〈排出権取引〉の容認など多くの課題を残した。