エゾユキウサギ








エゾユキウサギ(蝦夷雪兎) ウサギ目・ウサギ科
Lepus timidus ainu

 ウサギはオーストラリア、マダガスカルを除く世界中に分布していて、日本にはノ(野)ウサギ
〔反対はカイ(飼)ウサギ〕の亜種としてトウホクノウサギ、キュウシュウノウサギなど4亜種が生
息する。


 北海道にはヨーロッパからソ連にかけて分布する別の種であるユキウサギの1亜種であるエ
ゾユキウサギが生息するが、本州に住むノウサギとは近縁ながら別の種類である。
大きさはカ
イウサギと同じか、やや大きく、耳の長さはカイウサギより短く、その先端が黒くなっているのが
特徴。


 カイウサギでは目の赤い真っ白なアルビノがよく知られている。エゾユキウサギは、キツネや
テン。ワシ、タカ、フクロウなどの猛禽類の天敵から身を守るため、毛が保護色をしており、夏
毛が灰色かかった褐色、冬毛は雪兎の名に恥じず純白だが、耳の先の黒い部分だけは変わ
らない。目も赤くないので、カイウサギとは簡単に区別できる。


 平地から高山にまで生息し、基本的に夜行性であるが昼間も行動をする。餌は笹の葉、木
の枝、皮などで草食動物である。
平地では年数回繁殖し、1回の出産に1〜3子、まれに5子
を産む。親は特別な穴や巣は作らず、僅かに地面の表面を引っかいたりして浅い窪みを作り
その上で出産する。


 生まれたばかりの子は、カイウサギが目は閉じ毛もほとんど生えていないのに比べ、目も開
き、毛も生えている。
親ウサギは近くにいて時々、授乳し、外敵が近づくといち早く逃げ去る。
そのため親子が一緒にいる所を見ることが少なく、子だけが取り残されていることから、親は
近くにいないものとされてきた。


 子ウサギは人間が手を触れるほど近づいてもじっと動かずにうずくまっているが、数日間哺
乳を受けながら、草を食べるようになる。ユキウサギの行動範囲は、一日に1.5km程度で時速
80kmのスピードで野を走ることが出来る。


 野ウサギや野ネズミはよく「自然保護のバロメーター」といわれるが、森林の伐採などにより
生態系が破壊された跡地に真っ先に入り込んで異常に増えることがある。


 ウサギは胃と腸は大きく、二種類の糞をすることで知られている。よく目するのはコロコロと
した糞で、形状は鹿の糞にも似ているオガクズを固めたようなものである。もう一つはペースト
状の糞で、特殊な栄養を含む盲腸糞と呼ばれる糞を直接肛門から食べる行動(食糞行動)が
知られ、これを食べないと死んでしまうこともあるという。


 その昔、ウサギの肉は味が淡白で鳥肉に似ている事からヤマドリ(山鳥)、キジ(雉)に匹敵
するものとして愛食された。取り分け、徳川家康9代前の先祖が正月にウサギの雑煮を食し
た年からにわかに栄え始めたという故事により、新年にはウサギの吸い物がよく出された。
 また、多産なウサギは欧州では春と再生の象徴であり、アメリカでは性のシンボルとして男
性雑誌「プレイボーイ」誌のロゴマークにも登場することで知られている。


 アイヌ語名はイソポまたはイセポ。イセポ・カムイ、イセポ・チロンノプとも呼ぶ。イセポはキ
イと鳴くものの意。


 英名では野兎をヘア(hare)、飼兎をラビット(rabbit)というが、後者は日本では在来種では
ない。有名なピーターラビット、不思議の国のアリスに登場する時計兎などは、当然、飼兎で
ある。


 この夏(2001.7.29)、初めて二十間道路でユキウサギを確認したが、昔は冬になると町内
の雪原でよくユキウサギの足跡を見たものである。最近、ほとんど見かけなくなったのは、残
念であり心配な事象でもある。


<ウサギ>
 ウサギは体重1.5kg〜4.5kgの小型草食獣で、二十数品種いるが、大別してノウサギ、アナ
ウサギ、イエウサギ3二種類に分けられる。品種はアンゴラ種、チンチラ種、日本白種など
がある。

●ノウサギ
  朝夕単独行動をし、巣は岩陰や草むらにある。春秋2回繁殖。開眼全身被毛の3〜4子
 を産む。
●アナウサギ
  夜行性で孔道を掘り、その奥に巣を作り群居する。年数回繁殖し、開眼裸体の5〜6子
 を産む。
●イエウサギ
  11〜12世紀頃、ヨーロッパでアナウサギを改良して家畜化したもの。
ピーターラビット
  アナ(穴)ウサギと呼ばれるカイ(飼い)ウサギで、地中で子を育てる。