1999/2000年度シジュウカラガン観察記録

【越冬期間/平成11年(1999)12月21日〜平成12年(2000) 3月22日】


 





●はじめに
  静内町での越冬は、1998(平成10年)年に引き続き2シーズン目を数えるが、前回との相
違点は、1998年は人工繁殖による標識鳥(標識鳥:069)であり、越冬数は1羽であったのに
比較し、今シーズンは野生のシジュウカラガンが4羽越冬したという点である。
  越冬は、マガン、ハクガン、シジュウカラガンと3種類のガン68羽が93日間にわたり常に一つの
群れをなし、採食場所、ねぐらなど常に同一行動となった。

●越冬期間・越冬数

  *平成11年12月21日〜平成12年3月22日
    ○シジュウカラガン4羽(幼・成鳥は不明) 
   
●ねぐら
  昨シーズンまで、ねぐらは田原地区にある静内川中流域のみの一か所であったが、今シー
ズンは、初めて従来の場所以外の静内川下流域を何度か使用した。

●採食地
 ○A牧場(68日間)
   平成11年12月21日〜平成12年1月16日(27日間)
   平成12年2月11日〜平成12年3月22日(41日間)
 ○浦和地区/増本牧場・八田牧場(25日間)
   平成12年1月17日〜平成12年2月10日(25日間)
 
●採食状況

  今シーズンは、主として町内のA牧場で採食をしたが、このA牧場とは別の浦和地区の牧草
地でも25日間にわたり採食し、従来、次々と採食地を変えていった事象に歯止めがかかり、こ
の2箇所に集中しての採食となった。
  A牧場での採食が続いたのは、牧場のご厚意で秋の刈り入れ時期に刈り取りをせず、冬場
にガンたちが牧草を沢山食べれるよう配慮していただいていることもあり、質・量共に町内では
飛び抜けて優れていること。周辺の越冬環境が極めて良いということが挙げられる。

●環境整備

  静内町には馴染みがなかったマガンを知らしめることを目的に、越冬1〜2シーズン、その
存在を積極的にPRをし保護活動のための基礎を築こうと全力を挙げたが、結局、これが裏目
となり、何の知識もない人やアマチュアカメラマン、バードウォッチーなどがむやみやたらに群
れに近付いた結果、現在では1〜2シーズンの採食場所には全く姿を現さなくなった。
  この教訓を元に、ここ数年はマガンたちが、少しでも安心して越冬が出来るような環境整備
が必然的に私の役割となり、特にシジュウカラガン、ハクガンが含まれていたこともあり、この
二種類が越冬していたことは、越冬が終了するまで情報は未公開とした。
 また、越冬数が増え、群れが落ち着いて越冬するには現時点ではなんと言っても、採食場所
の公開を避けることが最も効果があるが、越冬する牧場主からサラブレッドへの安全配慮、防
疫上から人の出入れ制限などの理由から、牧場名を明かさないことを条件提示されたのは、保
護の観点からすると逆に好材料となった。

●渡りルート(シジュウカラガン・ハクガン)

  平成11年12月21日〜平成12年3月22日まで、シジュウカラガン4羽、ハクガン1羽が静内
町で越冬したが、それ以前に苫小牧市・ウトナイ湖、美唄市・宮島沼、砂川市・袋地沼で確認
されており、それぞれが希少種ゆえに同一個体である可能性が強い。
  また、12月21日、静内町に初渡来したマガンたちの群れ数は、個体数を調べるために撮っ
た写真には76羽が写っており、翌22日には越冬数となった68羽に減少していることから、ウト
ナイ湖で越冬した3羽は、12月21日に一旦、静内町へと飛来した76羽の群れの一部と思われ
る。

●宮島沼の雁(北海道美唄市)

  平成11年10月26日〜平成11年10月31日〜シジュウカラガン4羽
  平成11年10月12日〜平成11年11月7日〜ハクガン(幼鳥)1羽
  *滝川市・長谷川富昭氏提供

●袋地沼の雁(北海道砂川市)

  平成11年10月24日〜平成11年11月26日〜シジュウカラガン4羽
  平成11年11月2日〜平成11年11月6日〜ハクガン(幼鳥)1羽
  *滝川市・長谷川富昭氏提供

●ウトナイ湖の雁(北海道苫小牧市)

 
 ○札幌市・井川浩氏データ提供
    平成11年10月31日〜ヒシクイ200 羽、マガン20羽、ハクガン1羽(成鳥)
       11月20日〜ヒシクイ・マガン450 羽、ハクガン1羽(幼鳥)
       11月28日〜シジュウカラガン4羽、マガン200 羽、ヒシクイ10羽
       12月4日〜シジュウカラガン2羽(確認分のみ)、マガン200 羽、ヒシク
              イ4羽、ハクガン1羽(幼鳥)
       12月18日〜シジュウカラガン4羽、マガン43羽、ハクガン1羽(幼鳥)
       12月29日〜ヒシクイ2羽(飛翔不能2羽)
    平成12年1月8日〜ヒシクイ2羽(飛翔不能2羽)
       1月15日〜ヒシクイ5羽(飛翔可能2羽、飛翔不能2羽、不明1羽)
  ○ウトナイ湖サンクチュアリデータ提供
    平成11年12月〜平成12年3月
    (越冬期間は、渡りの群れが去った時から再び北帰行で戻ってくるまで)
            〜ヒシクイ3羽(飛翔可能2羽、飛翔不能1羽)

●シジュウカラガン99/00年度越冬数
 1999年/2000年度の国内での越冬数は、近年にない個体数が記録され、現在、詳細を
調査中ですが、確認されている総数は19羽(野生〜16羽、千島列島で放鳥〜3羽)となっ
ている。


●採食物(餌)
  シジュウカラガン4羽の採食は、マガン63羽といつも同じで、ねぐらも含めて常にこの群
 れと共に行動した。また、マガン群れとの争いごとなどは皆無であった。68羽の群れの採
食物は、今シーズンもほとんどが競走馬の飼育に関連する草地、採草地、放牧地などに自
生する“牧草”である。
  また、牧草は新芽(青草 )である。これも前年の行動と変わらないが、例年、マガンたち
は3月になると採食物がそれまでの牧草から米へと移行するケースが多かったが、今シー
ズン、水田での落ち穂等を採食する観察例は一度もなかった。