2001/2002年度ヒメシジュウカラガン観察記録


【越冬期間/平成13年(2001)12月6日〜平成14年(2002) 2月22日】







●はじめに
    ヒメシジュウカラガンは、これまでに国内での確認されることが僅か数例という珍鳥で、今回、北海
  道では初越冬となり、貴重な記録となった。
   ヒメシジュウカラガンは、アラスカ沿岸部で繁殖、アメリカ西海岸で越冬するが、個体数が世界で2
  7万3千羽(2000〜2001年度)しかおらず、8種類いるカナダガン(シジュウカラガン)の中で最も体が
  小さく、ガンの種類の中では個体数も少ない方に属し、日本には極まれにしか渡来しない。
    記録としては1979年10月〜1980年3月、宮城県伊豆沼で国内では初めて1羽が越冬。5〜6
  年前、新潟県、信濃川流域である大河津分水(分水町・寺泊町)で1羽を確認、昨シーズンの2000
  〜2001年度、10月14日〜11月12日間、宮城県伊豆沼周辺で1羽が確認されているなどに留ま
  り、データとして存在するのはごく僅かに過ぎない。

   静内での越冬は、これまでのシジュウカラガンが越冬したシーズンと同様、マガン群れとシーズンと
  おして同一行動をとった。観察をしてみると採食活動、その他の行動も群れとヒメシジュウカラガンと
  の間には違和感がなく、共に生活環境を築き、行動をするといったものであった。
●行動の特徴
  ○採食行動を含めた諸行動は悠々とマイペースで、単独での越冬行為には一羽というハンディキャッ
    プらしきものは感じられなかった。

  ○採食中に時折、マガンの尻を突いたり、飛びながら追いまわすなどの行動をとることもあり、結構、
    性格的に気が強いという印象を受けた。

  ○採食行動は、他のマガンよりスピードが早く草を突くように採食する。
  ○群れマガンから追われるなどのいじめを受けることなどはない。
  ○悠然としており時折、辺りを見回すが警戒心が強い方ではない。
  ○首を前に突き出しながら採食中、移動することが多い。
●越冬数
  1羽


●越冬期間

  平成13年12月 6日〜平成14年2月22日【79日間】
●ねぐら
  静内川中州
●採食地
  町内全域

●観察記録(抜粋)
  ○1月20日(日) 快晴  
                  昨日に引き続き新採食地Aで採食を確認。かなりの積雪で採食する際にがっ
               ちり腰を落とし
、その中から雪を掻き分けて牧草の新芽(青草)を食しており、い
               つもと比較しか
なりの労力を必要としているのが分かる。
                 15:00〜隣で採食しているマガンを嘴で突くなど、身体は小さいが性格的に結
                     構、気が強いところも見せる。群れと同一行動をとる。


  ○1月26日(土) 晴れ 

                12:10〜正午、神森上空を市街地方向へと飛行する群れを確認。
                12:20〜市街地方向から第三中学校方向へと戻って来る群れを確認。

  ○1月28日(日) 晴れ   
                11:45〜A地区でマガン群れと一緒に採食。群れ後方につき採食。
              
12:15〜群れ中央でマガンに追われることもなくマイペースの採食。
               12:34〜群れと一緒に御園方向へと飛び立つ。
                16:00〜群れ同様に行方不明。

      ○2月11日(火) 晴れ 1008hpa 126羽(マガン125羽、ヒメシジュウカラガン1羽)
               
     午前中、鵡川町で約120羽の群れを確認。今日は午前中、鵡川町、午後か
                  静内町という行動が判明、午後からは鵡川町と静内町間60qを往来したことが
                  判明した。

                     群れ数は昨日同様に129羽を確認。群れ行動は昨日同様に午後2時までは
                  非常に落ち着きがなく、飛んでは降り、飛んでは降りの繰り返しで、その間10分
                  間程度の間隔で同じ行動となり、採食地はA地区内の移動を繰り返す。

                     しかし、午後2時以降は採食地・B地区に2時間以上落ち着いて採食を続け、
                  採食パターンも常に移動しながらの行動とブブッ、ブブッと群れ仲間を確認する
                  声を頻繁に発し、暇なしに仲間同士でくちばしで突くなどの動作が見られ越冬中
                  の変化のない採食行動とは変化していることは間違いない。

                    この分だと、後何日、静内に居るものなのか。全く推測がつかないが、離町か
                  いつもより早いということだけは間違いないと思われる。
        


【 ヒメシジュウカラガン B.c. minima Cackling 
 ●生態
   1.カナダガンの中で最も小さく、マガモの1.5倍程度の大きさ。
   2.比較的羽ばたきは早い。
   3.甲高い声でキャク、キャクと鳴く。
   4.胸は暗褐色か赤褐色であるが、しばしば紫色味を帯びる。
   5.嘴は短くて太く、その長さは普通32mmを超えることはない。
   6.首の付け根に白い輪が現れることもあるが、あっても非常に細かい不完全であることが多い。
   7.嘴から前傾部にかけての形と頭部は全体的に丸みを帯びている。
   8.左右の頬の白斑はしばしば顎の下でつながっているが、黒い羽毛で分断されていることの方が多い。
   9.カリフォルニアでは、黄色い首環が付いていることがある。ただし、マガンにも同様の首環がついてい
     ることがある。
   ※参考〜シジュウカラガン(L64cm、W109cm)

●長都沼(北海道千歳市)

  平成13年11月15日〜ヒメシジュウカラガン1羽(静内での越冬したものと同一個体と思われる)
   *長都沼の雁・カモを守る会提供

 
 
  2001/2002年度はシジュウカラガンの当年で、過去最高、なんと28羽ものシジュ
   ウカラガンが確認され、その内、静内で越冬した個体を含めると4羽がヒメシジュウカ
   ラガンという大変、記念すべき結果となりました。
   その観察データは、「日本雁を保護する会」でまとめています。