第一部  冬鳥シリーズ〜20話


第1話〜
ハクチョウ@

 静内川への飛来 年ごとに増える


●区分/冬鳥(10〜3月)●場所/静内川
   「コホォー、コホォー」と、河口いっぱいに響き渡るオオハクチョウ
の鳴き声。
  降雪量が少ないため、ウインタースポーツとも縁遠く、これといった
楽しみもない静内地方の冬の風物詩ともなった静内川のオオハク
チョウ。
  しかし、昔から現在のように数多く生息していたわけではない。
残念ながら、昔の正確な記録はないが調べてみると、田原のヌッカ
の坂などで数羽が越冬していたようである。では、いつから増えたの
であろうか。
  昭和59年頃から、毎日、ハクチョウの数をカウントしている“ハクチ
ョウおじさん”毛利守さんの貴重なデータによると、最大渡来数は、
昭和60年・60羽、昭和61年・64羽、62年・70羽、63年・93羽、平成元
年・85羽、2年・106 羽、3年・120羽、4年・174 羽、そして、5年は2
月11日現在152 羽となっている。 
  また、忘れてはならないのは、平成元年、河川改修により河口右
岸が「白鳥ふれあい広場」として、整備されたことである。
  このことは、多くの町民のハクチョウとの出会いに拍車をかけ、さ
らに、絆を深めることの重要な出来事であった。
  

第2話〜ハクチョウA 

 南と北に住み分け オオハクとコハク


●区分/冬鳥(10〜3月)●場所/静内川
  町内で最も町民に親しまれ、愛されている野鳥は文句なくハクチョ
ウである。
  なにせ、ハクチョウが越冬中の静内川にパンくずなどの給餌をする
人の数は、日に数百人は下らないし、そのファン層も幼児からお年
寄りまでと幅広い。
  さしずめ“町民のアイドル”といってもいいほどの人気である。国内
で確認できるハクチョウは、大別するとオオハクチョウとコハクチョウ
の2種類である。
  静内川に渡来してくるものは、この内オオハクチョウであり、オオ
ハクとコハクの違いは、その名の通りオオハクの方が体が大きく、コ
ハクの方が体が一回り小さい。
  また、オオハクとコハクは、国内でも住分けができており、オオハ
クは北海道、東北、北陸、関東地方で南限は茨城県古徳沼。
コハクは、東北、北陸、関東、中部、中国地方で南限は、鳥取県中
海となっている。
  生息地は、北と南に別れるが、これは体の大きさに関係すると言
われている。 
  シベリアからの渡りでどれだけの距離を飛べるのか、つまり、体
が小さなコハクの方が、遠くまで飛ぶのに適しているということであ
る。 


第3話〜ハクチョウB


 渡来地には必ず゛ 名物おじさん


●区分/冬鳥(10〜3月)●場所/静内川
  国内で有名なハクチョウの渡来地が幾つかある。
  ラムサール条約の国内二番目の指定を受け、国内唯一のガンの
渡来地とても有名な宮城県迫町の伊豆沼。 日本で初めてハクチョ
ウの給餌に成功し、国内最大のハクチョウの越冬地でもある新潟県
水原町の瓢湖。
 湖で日本第五位の面積を持ち水鳥の楽園として知られ、国内ハク
チョウの南限の地である鳥取県米子市の中海。ハクチョウが好きな
人であれば、一度は訪れてみたい聖地である。
  そして、この3か所に共通するキーワードは名物おじさん。
 伊豆沼の笠原啓一さん。商店を営むかたわら、伊豆沼を守る会事
務局長、日本白鳥の会理事など、数多くの野鳥保護の肩書きを持つ。
やさしい笑顔が全てを語る。 
  瓢湖の吉川繁男さん。昭和29年2月4日、日本で初めてハクチョウ
の給餌に成功した吉川重三郎さんの長男で、現在も毎日、約一万
羽といわれる瓢湖のハクチョウに給餌を続けている。 
  中海の安田亘之さん。野鳥愛護の立場から、彦名干拓地の埋立
中止を体をはって訴えつづけ、今年ついに長年の夢であった水鳥自
然公園を完成させる。
  要するに日本を代表する渡来地は、偶然、そうったなったわけでな
く、そこにがっちりと根を張り、野鳥保護活動を続けている“名物おじ
さん”たちがいることを忘れてはならない。
 

第4話〜アメリカコハクチョウ


 ファミリーでの渡来を心待ち


●区分/冬鳥(10〜3月)●場所/静内川
  国内で確認できるのが数羽といわれているアメリカコハクチョウが、
静内川に初めて顔を見せたのが、昭和63年11月28日。
  それ以来、5年連続して静内川に顔を見せてくれている。アメリカ
コハクチョウはコハクチョウの亜種であり、くちばしのほとんどが黒い
のが特徴。くちばしの黄色部分が多いオオハクチョウとは、すぐ識別
できる。
  現在、静内川以外で確認されているのは、岩手県北上市北上川
以外になく、いかに貴重種かが分かる。
  アメリカコハクチョウの繁殖地は、北米と旧ソ連のごく一部。普通、
ハクチョウは、つがいで生活し、夫婦の絆が強いことで有名な野鳥で
あるが、静内川に渡来する個体は、単身。
  しかし、平成2年11月、コハクチョウとペアで渡ってきたこともあり、
ファミリーでの期待を抱かせたが、翌年、一羽で現れ、数多くの野鳥
ファンをがっかりさせた。
  いずれにしても、静内川の顔であり、人気者のアメリカコハクチョウ。
ファミリーで、また、一年でも長く、元気な姿を私たちに見せ続けて欲
しいものである。


第5話〜オジロワシ

 オオワシと合わせ約30羽程度が生息


●区分/冬鳥(10〜3月)●場所/静内川周辺
  長くて幅の広い翼。くさび形の白い尾を持つ褐色の海ワシ。
  多くは、冬鳥として北日本に渡来し、関東以西ではきわめて少なく、
国の天然記念物に指定されている。
  静内では、静内川河口、真歌山、うぐいすの森、浦和の海岸などで
勇壮な姿を見ることができる。
  しかし、町内にワシが生息していることは、意外に知られていない。
ましてやその数が、オジロワシとオオワシを合わせると約30羽程度
になると聞かされると、余計にびっくりする。
  オジロワシも、オオワシもその多くは、知床方面に流氷とともに、最
盛期を迎えたスケトウ漁に誘われて集まってくる。
  では、静内ではなにを食しているのだろうか。オジロワシの主食は
魚類。とりわけ、多くの生物たちの母たる静内川には、毎年、数万匹
のサケがそ上する。 そのサケを糧に、一昨年までは数羽程度だった
オジロワシが、昨年からその数が一挙に4〜5倍に増えた。
  理由は、サケの捕獲場が河口から上流の豊畑へと移動したことに
より、自然産卵が増え、餌となるサケが増加したからである。
  メッカ羅臼には及ばないが、どっこい静内もワシ・タカ類の隠れた穴
場なのである。