【越冬期間/平成10年(1998)11月30日〜平成11年(1999) 3月22日】
●はじめに
平成7年12月22日〜平成8年3月24日までの93日間、天然記念物・マガン41羽とヒシクイ1羽の計42羽が
北海道静内町で初めて越冬した。
2シーズン目、平成8年12月29日、マガン28羽が1シーズン目と同じ神森地区で越冬し、別行動のマガン
幼鳥2羽も1月15日から4月25日までの101 日間、町内田原地区で越冬した。(計30羽)
3シーズン目、越冬パターンが大きく変わり、越冬数こそ前年の越冬数30羽より3羽多い33羽となったが、
従来の採食地・神森地区には定着せず、神森地区での確認は僅か11日間に止どまった。それ以外の場所は
不明であったが、今シーズン採食地としてA地区で発見、しかも、この地には越冬2シーズン、3シーズンにわ
たり採食地として生息していたことが判明した。
越冬4年目となる今シーズンは、マガンの群れとしては過去最高の46羽(成鳥28羽・幼鳥18羽)が越冬した
が、それ以外にも町内に数か所に行動範囲を広げた。しかし、2シーズン目までの越冬地である神森地区に
は1月27日以外に地上で採食するのを確認出来ず、僅かに数日間、上空を通過する以外に群れを確認出来
なかった。
この群れとは別にオハクチョウと行動を共にするヒシクイ1羽・マガン1羽、計2羽の幼鳥2羽が新冠川をねぐ
らに新冠町と静内町を往来し、渡来日と旅立日は異なるものの大半の日々を共に行動し、今年も従来とは違
う越冬パターンとなった。
一昨年(2シーズン)以降の越冬で最も気になることは、心無いアマチュアカメラマン、知識を持つ持たない
に関係のないバードウォッチャーなど、人為的な要素に起因し、人間に対してマガンが非常に警戒心を持つよ
うなり、人とマガンとの信頼関係が希薄となってきていることである。
結果、マガンが採食地を変更せざるを得なくなり、事実、毎年、変化している。これをどのように関係を修復、
絆を深める事が出来るかが今後の大きな課題である。
●成鳥・幼鳥比率
マガン46羽の成鳥・幼鳥の割合は、成鳥28羽、幼鳥18羽と群れ全体に対する幼鳥比率が39%と他の越
冬地と比較し非常に高い。しかし、この数値が何を意味するかは分らない。
●越冬期間・越冬数等
○平成10年11月30日〜平成11年3月22日( 113日間)
@平成10年12月28日〜平成11年2月25日 (60日間)/46羽(成鳥28羽・幼鳥18羽)
A平成10年11月30日〜平成11年3月22日( 113日間)/ヒシクイ幼鳥1羽
B平成10年1月1日〜平成11年2月24日 (55日間)マガン幼鳥1羽
(@とABは別行動、ABは前半は同一で後半は別行動)
○越冬数〜48羽(@+A+B)。48羽は過去最高の越冬数。
@種 類/マガン〜47羽、ヒシクイ〜1羽
A成鳥・幼鳥/成鳥〜28羽、幼鳥〜20羽
●ねぐら
群れは、結果的には今シーズンも従来地の田原地区・静内川中州で確認したが、ねぐら場所を実際に確
認出来たのは1月26日という遅い期日となった。
それまでの期間は推測するが確定するに至らず、少なくても1月中旬までは静内川とは思われるが場所
を確定することが出来なかった。従って、今シーズンの静内川でのねぐらは複数箇所と推察される。また、1
月中旬、夕方に海上へマガンの群れが飛び去っており、静内川以外にねぐらを求め、海上(太平洋)を実際
に利用した可能性も考えられる。
一方、これとは別行動のマガン1羽・ヒシクイ1羽の幼鳥は、共に新冠川の市街地流域をねぐらとしたが、
時折、静内川河口域でも2羽が一緒にねぐらとしているのを確認。いずれもオオハクチョウの群れを同一行
動をとった結果と思われる。
●採食地
今シーズンほど採食地が変化に富んだ年はなかった。従来の採食地では確認出来ず、町内各地や隣
町である新冠町など、新たな採食地に次々と姿を現し、一か所に止どまらずに各地に分散、移動し観察す
る場所が確定出来ないために苦労した。
○マガン群れ(46羽)
*前年までの越冬地である神森地区(神森W地点)で採食を確認出来たのは1月27日、一日だけで、
それも僅か14時23分〜14時47分の24分間という短時間である。それ以外には12月下旬、1月下
旬に上空を群れが通過するのみで、今シーズンに限っては、これまでの採食地のべースとなってい
た神森地区は完全に採食場所から除外される結果となり、新規に数か所を採食地として利用した。
○幼鳥2羽(マガン、ヒシクイ)
*この2羽の採食地はほとんどが新冠町内である。
*行動範囲はベースとなるのが新冠川で、新冠川沿いの数か所の牧場(牧草地)をオオハクチョウ群
れと共に移動し採食した。
*マガン幼鳥は、時折、隣町である静内町にも姿を見せ、平成11年1月1日〜2日は数羽のオオハク
チョウファミリーと共に神森地区での採食も確認されている。
●採食物(餌)
*46羽フアミリー、2羽幼鳥とも、今シーズンも採食地は、ほとんどが競走馬の飼育に関連する草地、
採草地、放牧地などの"牧草"であり、確認されたのは全て静内町内である。
*前年同様、早朝時はまどろみが続くも、9時頃から活発な採食活動に入り、お昼頃に少々、背眠を
するなどの休息をとり、午後から再び、旺盛な採食を続ける。
*マガンたちの採食物は牧草の新芽であり、これも例年の個体と変わらない。
*今シーズン、マガン、ヒシクイの観察期間が少なかった性もあるが、水田での採食観察例は一度も
なかった。
●観察例
(省略)