第二部 夏鳥シリーズ〜40話
第21話〜ヒバリ
春一番を告げる゛のど自慢゛
●区分/夏鳥(3〜10月) ●場所/町内全域
「ピーチク、ピーピーチク」長い北国の冬に別れ、待ちに待った
春を告げる夏鳥の一番手は、何といってもヒバリのさえずりであ
る。
ヒバリの初渡来は、意外に早い。誰もが、春爛漫、陽だまりに
なってからの渡来を連想する。しかし、例年、静内地方では3月
下旬に、元気な初鳴きを聞くことができる。
全国各地で、声高らかにさえずるヒバリであるが、馬産地静内
の、牧場上空で舞うくらい、ヒバリにぴったりする光景はない。
ヒバリがさえずり始めると天気になるという伝承が各地にある。
ヒバリの声を聞くと雨もやみ、天気も良くなるという。だから、「日
が晴れる」「日晴り」と言葉も変化し、最後に、「ヒバリ」となった
その名の由来も、理解出来る。
そういえば、終戦後の憔悴、荒廃した暗い日本を、歌により、
人々に生きていく勇気と希望、明るさを与え続けた、今は亡き天
才歌手「美空ひばり」という芸名ほどヒバリのイメージとキャラクタ
ーを言い表す例はない。
美空ひばりも不滅ならば、野鳥のヒバリだって、自慢の喉(美
声)は永遠に不滅なのである。
第22話〜ツバメ
マイホームに最適な馬屋
●区分/夏鳥(5〜10月) ●場所/町内全域
どういう訳か、ツバメは馬屋(厩舎)が好きだ。静内では、子育
て(繁殖)に馬屋を使うことが多く、天井にせっせと泥とわらを運
んでは、巣を作る。
どこにでもサラブレッドはいるから、馬屋も多く、ツバメには、
マイホームとして重宝この上ない。
農家の人たちはツバメがやって来る繁殖期になると、馬屋の
戸をほんの少しばかり開ける。通常は、きちんと閉めているが、
それでは巣への往来が出来なくなることを知っての心遣いであ
る。
お礼という訳ではないが、ツバメも実に多くの害虫を餌として
食べ、多くの農作物を虫からの被害から守り、人々の生活に貢
献する。
ツバメは、東南アジアで越冬し、台湾、沖縄諸島、九州・四国、
本州と陸伝いにやって来る。
しかし、中々の頑固者で、次の渡り先の平均気温が8〜9度
になるまで、移動せずにじっと待機する。だから、日本最初の渡
来地、南九州に渡来してから最北端の北海道に渡ってくるまで、
なんと45日もの日数を要している。
本気で飛べば、北海道へ渡るくらいはあっという間で、一日も
かからないというのに…。
第23話〜ウグイス
姿なき影法師 「法、法華経」
●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内全域(山野)
“日本三名鳥”というのをご存じだろうか。いずれ劣らぬ、す
ばらしいさえずりが共通項で、ウグイス、オオルリ、コマドリの3
種をいう。なかでも代表格は、やっぱりウグイスであろう。
「ホー、ホケキョ」の鳴き声は、爽やかな野鳥のさえずりの代
名詞である。
静内では、最も町民に親しみ、愛されてきた歴史ある野鳥で
ある。“ウグイス谷”など、真歌地区はいつの頃からか、ウグイ
スにちなむ名称が付けられ、今でも“うぐいすの森”と保健保安
林にも命名されている。
静内には町花・町木は制定されているが“町の鳥”は、まだ
未制定である。一昔前までなら、文句なしにウグイスとなった
であろうが、最近ではハクチョウの存在があるので、なかなか
甲、乙つけがたい。
美しい歌声の持ち主でありながら、その姿をなかなか容易
には見せてはくれない。いわゆる、姿なき影法師たるゆえん
である。
しかし、その実像は、意外にもあの美声からイメージする姿
とはほど遠い。
世の中、そううまくはいかない。「天は二物を与えず」とは、
よく言ったものである。
第24話〜ウミウ
「鵜呑み」「鵜飼い」のモデル
●区分/留鳥(通年) ●場所/浦和海岸、静内川
「ウ」といえば、岐阜県長良川の鵜飼いが有名であるが、鵜
飼い用のウがこのウミウである。
巧みに潜水し、魚を捕ることぐらいは誰でも知っているが、よ
く、魚を頭から豪快に丸飲みにすることから、“鵜飲み”という言
葉が生まれた。
数年前、世界中の注目を集めたペルシャ湾岸戦争で、爆撃
により石油が海に流れ、油にまみれた海鳥がテレビの画面や
新聞で大写しに報道されたが、その時の鳥がウミウである。
静内では、一年中、入船や浦和の海水浴場、東静内、春立
の海岸で、岩に上がっているのをよく見かける。
ところで、岩場で観察されることが多いのは、ウミウの羽にお
おいに関係する。 ウミウの羽毛は、カモ類や白鳥などの水鳥
に比較して、防水性に乏しいという欠点がある。
しばしば、左右に大きく翼を広げ、羽を乾燥させなければ、
潜水は勿論、飛ぶことだって出来なくなるというから、ちと、気
の毒に思えてくる。
大袈裟にいうと、身体にハンディがあるようなもので、にせ
物の部品をだましだまし、使用しているようでもある。
そこまで言うと、ウミウには失礼であろうか。
第25話〜ノビタキ
草原を舞台に華麗な舞い
●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内全域(草原)
草原を代表する夏鳥といえば、ノビタキであろう。
体長13a。大きさ、その体形、しぐさ、色合い、蝶のような華
麗な舞い、美しい鳴き声からこれほど、可憐という言葉がぴっ
たりする鳥はいない。
北海道では、低地の草原で普通に生息するが、本州では、
志賀高原、霧ヶ峰など、高原でしかその姿を見ることができな
い。
雄と雌、夏羽と冬羽では他の野鳥と見間違えるほど、羽の
色合いが変わるが、いづれも上品さという点では、変わらない。
森の中より、広く開けた草原を好み、草の茎によく止まる。
緑の草原に、青い空と爽やかな風。そしてノビタキの「ヒーヒー、
チューイ」という明るく柔らかいさえずり。“初夏の高原”というイ
メージが似合う。
静内では、4月下旬頃から、牧草地や海岸の草地で普通に
観察できる。
北海道は野鳥の楽園である。本州では高地でしか見ること
ができない野鳥が、北海道では、低地の草地で観察できるか
らである。
遥か遠くから渡ってくる野鳥たちを見るにつけ、豊かな大地
を、彼らのためにも私たちは、守っていかなければならないと
素直に思う。