第26話〜オオジシギ

 一挙に北上の神風特攻隊


●区分/夏鳥(4〜10月) ●場所/町内全域(草原) 
  緑豊かな春空を、猛スピード、我がもの顔で、そこのけ、そこ
のけ と飛び回る。 
  「ズビ、ズビ、ズビヤーク」と鳴いたと思うと、次の瞬間「ザザ
ザァー」とあたり一面とどろく号音(正確には羽音)ともども、真
っ逆さまに急行下。
  一体何のためにと、いぶかしげな御仁もいるかもしれないが、
オオジシギにとっては大きなお世話。繁殖期のディスプレー。
つまり、自分のテリトリー(なわばり)を、自分なりの方法で表現
しているだけ。
 そして飛行距離。オオジシギの越冬地は、遥かオーストラリア。
北海道までは、なんと4,000 qという長旅。 渡来地が日本に限
られ、それも九州、四国、本州を一挙に通過、ほとんどが、北海
道にしかやって来ないという。
  2mもの羽を持つ白鳥が、4,000 qを飛ぶというのなら、まだ
納得できる。だが、体長わずか30pのオオジシギが、これだけ
の距離を飛ぶことに、尊敬の念すら感じる。
  シギ特有の流麗でスマートなボディ、愛嬌ある長く突き出たく
ちばしも魅力。
  数多くの野鳥の中で、ユニークな個性と習性は、私が愛して
やまない野鳥の一つである。

  
第27話〜カ ケ ス

 喉は゛物まね゛の名人芸。


●区分/留鳥(通年)  ●場所/町内全域(山野)
  頭が良く、好奇心旺盛で、幾つもの面白い習性を持つ、個性
豊かな野鳥。
  まず、名前からしてユニーク。枯れ葉などで杯型の巣を作り、
樹上に掛けるので、カケス(懸巣)の名が付いた。だいたい、巣
を吊すという発想が大胆だ。
  雑食性で、地上で餌を探す。昆虫、野鳥の卵、どんぐりの実
など、食べきれないときは、落葉の下に隠すという、知恵も持っ
ている。
  そして、極め付けは、名人芸の鳴き声。「ニャーオ、ニャーン
オン」と猫の声。お次は「ワン、ワン」と犬の声。聞こえなくなった
と思ったら、今度は「カァー、カァー」とカラスのご登場。終りには、
馬産地らしくなんと「ヒヒーン、ヒーン」とサラブレッドのいななき。
  …ん、何だこれ?。どうして誰もいない山野の中から、聞こえ
てくるのだろう。不思議な声の主はなんとカケス。動物はもとよ
り、様々な人間の生活音までがレパートリーというから、驚くほ
かはない。
  しかし「ジャー、ジャー」と、悲しいかな、最後には地(地鳴き)
を出してしまい、正体がばれてしまう。
 憎めないというか、可愛いというか、愛すべきキャラクターで
ある。

  
第28話〜シジュウカラ

 あまり人を恐れぬ人気者。


●区分/留鳥(通年) ●場所/町内全域(山野) 
  巣箱をかければ、巣を作り、バードテーブルに餌を置けばす
ぐやってくる。「ツツピーツ」と可愛い鳴き声で飛び回り、あまり
人も恐れないから、簡単に観察できる。
  数多い野鳥の中でも、その愛らしさから、多くの人に親しま
れる代表格がシジュウカラ。
  辺り一面、緑もすっかり濃くなったある日のこと、釣り堀のご
主人から電話があった。「コーラの自動販売機に鳥が巣を作っ
たから、見にきてくれないか…」。繁殖期に入り、野鳥たちの
子育ても、たけなわといった季節だから巣作りは珍しくはない
のだが、それが自動販売機とは。
  出掛けてみると、コーラ瓶の蓋を収納するボックス型のケー
スは、羽毛が敷き詰められ、なんと巣箱に早変わりしていた。
釣り堀のご主人、早速、自販機に使用できない旨の張り紙を
し、この親子を守ってくれた。雛が無事にかえったことは言うま
でもない。
  年々、巣となる天然の樹木が少なくなるから、仕方なしに人
工物に営巣するのであろうが、シジュウカラをたくましいと、ほ
めてばかりいられない。


第29話〜セグロセキレイ

 清純派のハンサムボーイ


●区分/留鳥(通年) ●場所/町内の河川 
  羽を持ち、自由に大空を飛ぶことができるのが“野鳥”である。
  しかし、その飛行方法は皆同じとは限らない。種類により、翼
の形や大きさも違い、飛び方も様々である。カラスのように、上
下に大きくはばたいて前進する飛び方を“はばたき飛行”といい、
全ての飛び方の基本となる。
  また、トビのように、翼を大きく広げたまま、空中を滑るような
飛び方を“滑空飛行”という。多くの鳥たちは、この2つの飛び方
を使い分ける。
  セグロセキレイやヒヨドリは、このはばたきと滑空の繰り返しを
しながら飛ぶ。この方法を波状飛行というが、これは、翼の飛翔
力(パワー)に余裕があるからこそなせる技である。
  うっとりするような流線形のボディ。白と黒のシンプルな羽色。
セグロセキレイは、なかなかのハンサムボーイ。静内川をはじ
め、町内の河川でほとんど観察できるが、仲間のハクセキレイ
ほど、数は多くはない。
  カワセミと同じにセキレイは、きれいな川を象徴する、清純派
を代表する野鳥であり、国内だけに生息する、貴重な日本特産
種でもある。


第30話〜ハクセキレイ

 セキレイ仲間で数が多い


●区分/留鳥(通年)  ●場所/町内の河川 
  体長21p、格好、習性など、仲間のセグロセキレイとほとんど
同じである。
  違うのは、綺麗なセグロセキレイと比較して、少々器量が落ち
ること。黒と白のボディカラーは同じではあるが、斑(まだら)とい
うか、落ち着きのない配色というか、どうも見てくれが悪い。
  ところで、セキレイ類の巣をいたずらするとその人の家が、火
事になるとか、不幸がくるとの言い伝えが昔からある。勿論、迷
信の類いであるが、察するに、虫を捕らえるのを見て、農耕民族
にとって作物保護の点から、野鳥を保護するための方便として
語り継がれてきたのだろう。
  餌は、水生昆虫やその幼虫が主であるが、川面ぎりぎりをす
いすいと飛び、飛んでいる虫を空中で捕まえたり、地上を歩きな
がら昆虫も食する。
  なわばり性で、低地の水辺に生息し、人家の近くでも繁殖する。
軒先や時には車のボンネットにも巣を作ることある。
  セキレイの仲間では、一番数が多く、町内の河川でセキレイと
いえば、この鳥といえる位、普通に観察できる。つがいで生息す
ることが多い。